事業報告

平成25年度 第2回研修会

●研修1    「兵庫県総合治水条例について」

  兵庫県県土整備部土木局総合治水課       山内 良太     課長
     同 農政環境部農林水産局農地整備課     中島 達也     副課長
     同 農林水産局治課                          塩谷 嘉宏     副課長
     同 環境創造局豊かな森づくり課          小野山 直樹  副課長

 

・平成24年4月に施行した総合治水条例の概要と取り組み状況について説明する。
【条例化に至った背景】
・国レベルでは昭和55年「総合治水の推進」建設事務次官通知。都市河川中心だった。
・ここ10年間でも数多くの浸水被害があった(H16台風23号、H21台風9号、・・・)。流域の治水、災害に強い森作りなど県民防災意識向上⇒県のHPにCGハザードマップ。
・中・上流部、支川での被害拡大、佐用町では避難中に死者。土砂災害⇒警戒避難情報の適切な伝達という課題⇒上流・支川すべてで浸水想定図 ハザードマップ作成。
・反乱予測シルテムで3時間先までの河川の氾濫予測できるようにした。市町での的確な判断につながるように活用していただいている。
・緊急5カ年計画策定・実施。 
・課題:利水ダムの活用
・大雨の頻度増加や人口高齢化等により今まで以上に浸水被害が拡大:早く流すというだけでは治水は難しい。
・武庫川は2級河川だが下流部の人口・資産が全国10位⇒H5年武庫川ダムの計画⇒住民の反対でとん挫⇒H12住民の合意形成とともに総合的な治水対策⇒ダムは検討、総合的に治水対策を行う。
・近年の災害を教訓に、武庫川の取り組みを全県的に展開しよう⇒総合治水条例。
【総合治水条例の概要】
・目的①基本理念を明らかに、②総合治水に関するあらゆる施策を取る、③県・市町・県民の協働で継続的に推進する。
・ダムについても治水対策の中の「有効な対策の一つ」として位置づけ。
・特徴:「流す・貯める・備える」に関し、県・市町・県民の責務を明確に。
・地域ごと課題が異なるので、主要河川を中心に11の地域に分けて各地域で推進計画・推進協議会。行政・学識・県民など広く意見を聞きながら、進捗を確かめながら進める。
・一定規模以上の開発行為で、調整池の設置と適正な保全を行政指導(条例で開発行為の抑制、罰則規定)

【課題】
・実効性ある推進計画。市町・県民の取り組みインセンティブ。県民への広報、周知。
・地域課題を熟知した委員の選定。連合自治会長、JA会長、ため池協議会の会長など。
・随時見直しのフォローアップ。計画を作ることが目的ではない。
・県管理施設での率先実施。その効果を見せる。
・指針の作成、財政支援。国に対し、制度の規模要件、大都市だけでなく制度拡充、新設制度を要望。
・県民に対しては顕彰制度。広報、さまざまなパンフレット。

【効果】
・個人負担のかかるものなので、効果を計算上で出してみてもらう。
① 上流域のため池効果を計算:流域面積27平方kmの河川:22のため池を満杯より1m下げていたら(事前放流)、下流河川で1割流量が下がる。水位22センチ下がる。
② 下流域の校庭貯留:校庭に30センチ貯めたら、100m下流で流量半減 
・管理者の理解と協力がなければ進まない。
・各家庭で汚水タンクを空にしておけば保水できる。ピークカット。副次効果として雨の降り方に関する意識の向上。日常での節水効果。急な断水に対応。11市町が補助金。
・取り組み状況:H24年度3河川で計画策定(武庫川・千種川・法華山谷川) 

【計画の内容】  
①武庫川
・戦後最大規模の洪水を対象にした河道整備、河床掘削、堤防強化。
・校庭・ため池等で64万㎥の雨水貯留
・利水ダム活用。
・津波避難ビルを洪水時にも活用(西宮市)
②千種川
・流域対策のモデル地区の佐用町・相生市で校庭貯留、溜池貯留、減災対策として浸水の水位を表すプレート設置、公共施設の耐水化
・田圃ダム10ha×10cm 最大貯水量、蹟板を入れる。農政環境部で配布して実証実験。1万㎥貯水。
③法華山谷川 
・河川改修 樋門・ポンプの増設 水路回収 県と市の連携
・数値目標 10年後28万㎥の目標留量
・適正な土地利用 輪中提設置を検討 
・ため池の事前放流 大雨の前には水位を下げる。 

【そのほかの地域での取り組み】
・丹波市:家電量販店が駐車場の地盤をかさあげて店舗地下に雨水貯留 避難所としても開放
・洲本市:県立病院 地盤のかさ上げ 遮水壁:フラップ式浸水防止壁

【まとめ】
・防げない災害はダメージを小さくするのが減災の基本的な考え方。「合わせ技」で対応。行政と県民、ハードとソフト、河川対策と減災・・取り組みのすそ野を広げる。連携・継続が大事で、条例に基づいて推進。市町村、県民とともに流域対策。 
   

【質疑応答】
高砂市議:総合治水条例を作っていただき、住宅地開発で貯水対策した←いい対策である。
校庭貯留・調整池の対策に県の補助金はないのか?
県:調整池は1ha以上開発で流出増を伴う場合の対策を条例で義務化、開発者の負担。雨  
水貯留は国の補助金がある。雨水貯留浸透事業。規模要件、経済性の面での採択基準がある。県としては補助金は設けいていない。市が対象でもよい。

高砂市議:治水対策にお金をかけても追っかけになる。何百億にもなる。昔から人々が住んでいる安全地にシフトさせる提案を行う。これから人口減少。制度整備は?
県:土地利用規制の話だと思う。都市計画法で市街化区域、市街化調整区域の線引き。制度の中で線引きが決まり、開発許可も一定の条件が整えば開発しなければならないので、検討はしたが、第52条で土地利用策定者の配慮を謳った。計画者との連携がポイント。高砂市では業者にチラシ配布。

香川県議:議会委員会で発議。なかなか治水という発想に農水部局が乗ってこない。土木との連携を取ろうとしていないように感じている。兵庫は意識の醸成をどのように?
  また、太陽光発電の敷地に溝を掘るなどの対策に補助金はあるのか?
県:1点目、H23に1年間かけて条例制定の作業。部局連携が重要。庁内調整会議で部長の上の理事が頭。関係各部局が構成員という部局横断。素案段階で土木の考えを示して意見を伺い、出来るところ、できないところのやり取りをして採取的な形に。農政環境部の取り組みとしていろいろ資料を作ってもらっている。
武庫川ダムの経緯経過があったので庁内で部局横断の素地はできていた。白紙からでは条例はできなかっただろう。
水田や溜池という農業施設活用は土地利用者の理解が前提。一気には進まないが、協議会で話し合いを重ねている。
  2点目、県の企業庁が沈砂地、素掘りの水路は県土整備部の事業として実施。
県:【農水部局農地整備課】
昔から池を直しているが農水省事業。田圃は減る向きにあり、新規のものはない。危ないものを直すのが前提の補助金。かさ上げに補助金がない。そういう面で抵抗感がある。農水省の補助金を上手に使うという意味では抵抗感がある。 
かさ上げは難しいが「事前に水をぬいてもらう」という取り組みを行っている。ため池協議会の協力を得た。池の周りが都市化して迷惑施設に感じられているので「いや、これは財産だ」と協議会を作って守っている。その活動の中で総合地水に取り組んでいる。
事前放流のための「切りかけ」を作る。今年から県営の溜池事業には「切かけ」をつくるもしくは事前放できる施設を作ることを義務化している。
県【豊かな森つくり課】
昔から六甲山の山の手入れをきっちりとやるという素地がある。災害があるとよく山が悪者にされる。土砂流木を止めるために、山を味方にする必要がある。上から下へどんどん施策を部局横断でやっている。兵庫県としてうまくいっていると思う。
県【農水部局農地整備課】
 ため池や田んぼなど農家のものを使う。「農業を頑張ろう」ということならば一生懸命行くが、農業以外のことで農家にお願いに回るのが非常にしんどいというところに農林部局として抵抗感があると思う。
溜池においては非農家のかたもいっしょに協議会活動を行っている。多面的機能支払い・・・非農家も一緒に農地周りする取り組みは日本一。農地水保全を2000集落取り組んでいる(全3000集落中)。農家・非農家の連携が大事。
漁業者の海苔養殖は栄養分が不足していたので「池を干してほしい(溜池の水を流して欲しい)」という要望⇒ため池池干し作業に漁業者も参加。
県【土木】
浸水被害の軽減ばかり出すと「行政の仕事だろう」という声が出る。「雨水は日常でも使える」「溜池の推移を下げれば設備を守れる」「社会貢献で」「BCPで」と副次的効果を合わせて説明し、理解を得ている。相手方の目線に立っての話を心がけている。

田原本町町議:私どもも田圃ダムを推進している。蹟板  
はいろんなタイプがあるが?
県:始めたところ。新潟県は1万ha田圃ダム、愛知など先進事例を勉強。この形がいいかも含めて実験し始めたところ。
竹原本町町議:いろんな検討をしている。

滋賀県議:流域治水基本条例、留めるということに対し、建築基準を入れるかどうかで議論が分かれた。
県:すでに市街化したところが対象なので、新開発少なく、建築規制の効果が薄い。合意形成も難しい。努力義務。判断予測システムなどソフト対策と合わせて。補助ない個人住宅。浸水計画に位置づけされたものは税制補助。

三田市議:P7県立高校で貯留OK。しかし個人の備えについては市が進める気配がない。
県:各戸貯留、下水道課が市町と勉強会。11市町で国の補助を受け助成。

岩手県議:田圃ダム、作物への影響は?
県:今のところ被害の話はない。懸念に対し、理解のある村で始めた。渇水だったが、大雨の時、田圃脇の水路で流量が減った。転作田も使ってやっている。効果は大きい。
新計画には最近の雨の降り方考慮。千種川被害、法華山被害、ともに流量は最終目標以内だった。最後までハード対応するのは限界がある。


県【治山課】
放置されている森林が増えている。「新兵庫の森つくり」に取り組んでいる。公的関与による森林管理の徹底。「森林管理100%作戦」国と県の造林補助事業は68%の補助率。残りの32%を  
県と市が分担して、森林所有者の負担をなくして間伐推進。H13~23 第1期対策、H24~33第2期対策。
国の補助も「間伐材排出」が条件になってきたので作業道整備も100%作戦の対象とした。
H16台風23号災害で2900ha風倒木被害。それらをきっかけにH18年「県民みどり税」創設。年間24億円:1県民800円、1000円の超過課税に上乗せ。法人税も。
防災に特価して「災害に強い森作り事業」、H18~H22 1期対策、H23~H27 2期対策。
途中、H21に流木被害があったのを教訓に、危険渓流の流木を取り除いたり、簡易な流木止めをしたりした。
住民やボランティアが自主的に行う活動にも資機材補助。

高島市議:山の流木・東北で被害。治山ダムを超えて落ちて来る。間伐や流木対策は大事だと思った。間伐材に対する取り組みは?
県【治山課】
流木が谷筋に溜まった状態が多く見られた。間伐材を商品化する取り組みが大切。立木は一部廃棄物処理、チップ工場、パルプ工場へ。
間伐木を簡易な土留め工に利用。緊急防災林整備。間伐材を最大限利用。浸透度を高めたり植生の回復を早めたりもしている。